それは28年前の出来事だった


「それでも、政治は前に進まなければならない」というタイトルで10日前にブログを書いた。内容は、安倍元首相が銃撃を受け亡くなる結果になったけど、政治は前に進まなければならないといったことを書いていた。

なんとなく、このフレーズは誰かから聞いた言葉のような気がしていたけど、それがなんなのか突然思い出した。

1994年5月F1サンマリノGPの決勝レースで、偉大なるレーシングドライバーであるアイルトン・セナが突然コースアウトしウォールに激突、すぐさまドクターヘリにより病院に搬送されるが帰らぬ人となってしまった。その時、F1地上波の生中継で解説の故・今宮純さんが放った言葉がある。

「モナコGPにセナはいませんが、F1は続いていくわけです」

あの時代の地上波は一部レースを除いて録画を深夜時間帯に放送していた、でも、あの日はレースの録画を伝えつつ生放送で現地の実況陣がコメントをしていた、そんな中の言葉だった。

1993年、F1が好きになった瞬間から、自分にとってアイルトン・セナはヒールとしてそこに存在していた。本来ならセナの永遠のライバルであるアラン・プロストがヒールであり、セナがヒーローであるはずだったのに、なぜか自分の中ではその役割は逆になっていた。その年チャンピオンを獲得したプロストが引退し、翌94年からセナはチャンピオンチームのウィリアムズに移籍、さらに私のセナ嫌いは加速していた。そんなタイミングに突然彼は天に召されてしまったのだ。

セナのことは全く好きではなかったが、その対象が突然F1からいなくなってしまい、自分でも考えられないほどの喪失感を味わうことになった。でも、それからもF1の事を好きであり続け、20年後にF1にメディアとして関わることができたのは、すべてあの日の今宮さんの言葉があったからだ。

そして2022年、私が全く評価していない政治家である安倍元首相が凶弾に倒れてしまった。まだまだ彼には語って欲しい事がたくさんあった、私が支持する政治家たちの追求に応えて欲しかった。そんなことを思ったときに出てきた言葉、それが、

「それでも、政治は前に進まなければならない」

だった。

たぶん、まだ人生でそういうシーンに立ち会うこともあるだろう。人の死は、生きている人たちにとって計り知れないダメージを与える。でも、生きている人はこれからも生き続けなければならない。自分が評価していなかった英雄の死により、私は大きな事実を学んだ。それでも、人は生き続けなければならないのだ。陽は、また今日も上るのだから。