2018年9月5日、私は大阪発の夜行バスに乗っていた。あの関西を直撃した台風、私は京都のマクドナルドでとにかく台風が通り過ぎるのを待っていた。そして、なんとか台風をやり過ごし、その日の夜から翌日にかけたくさんの関西のミュージシャンと話をして、本当に疲れ果ててバスに乗り込んだ。9月5日の1時半、サービスエリアの休憩を経てバスに戻る。色々連絡が来ていたけど、とにかく疲れててすぐに寝てしまった。
7時過ぎ、再びサービスエリアに到着して目を覚ます。トイレに行き顔を洗い、飲み物を買う。ツイッターをチェックしたら3時過ぎに北海道で大きな地震が起きたことを知る。しゃれになっていない規模だ。関西で恐ろしい台風の直撃を受けた後の北海道での地震。色々調べようとしていたけど、スマホを握ったまままた寝てしまっていた。
9時前、高速道路は渋滞している、到着時間は30分ほど遅れるみたいだ。再びツイッターやヤフーで北海道で発生した地震の情報を調べる。え、北海道全域で停電? その瞬間、完全に目が覚めた。そう、自分が管理しているサーバが石狩にあることを思い出した。そういえば、このブログ自体も石狩のデータセンターで運用している。北海道全域で停電しているのに、障害アラートなどは一切出ていない。どういうことなのかすぐにはわからなかった。バスは新宿に着き、すぐに小田急線で下北沢に向かった。
下北沢の事務所に到着し、すぐにテレビをつける。関西でも信じられない光景を見たばかりだけど、それと同じレベルの見たこともない風景を見ることになる。そして、北海道全域の停電は継続中だ。
サーバの状況をチェックするが全く問題は発生していない。管理しているサーバは全く問題なく運用を継続している。さくらインターネット田中社長のツイートで、石狩データセンターの状況を知る
石狩データセンターですが、地震による停電の影響により発電機による給電を行っており、燃料の備蓄もあります。一部、蓄電池設備の不具合がありましたが、現在は復旧しております。社員の無事も確認できました。ご心配ご迷惑おかけしておりますこと改めてお詫び申し上げます。https://t.co/yo6Mnk51bU
— 田中邦裕 (@kunihirotanaka) September 5, 2018
一部で不具合があったようだが、うちが管理しているサーバは完全に無傷だった。北海道全域が停電しているけど、データセンターなので当然発電機が稼働し電力は供給されている。ただ、このまま電力供給が絶たれたら、、、確か、燃料は48時間程度だったと思い出した。
北海道電力のサイトで情報収集をしたいが有効な情報はなく、そもそも接続しづらい状況が続いている。ニュースでは経産大臣がよくわからない発言をしている。全く状況がつかめない。そして、北海道電力が停電解消の見通しが全く立っていないことを知る。
停電の解消見通し立たずと北海道電力 | 2018/9/6 – 共同通信 https://t.co/WLQGBtQF65
— シモキタ (@ymkx) September 6, 2018
※別の記事でどういう状況なのか確認したけど、一般の人にはかなり理解が難しい状況になってるみたい。被害状況の確認もいるだろうから、時間かかりそうだ
他の記事で北海道の電力はブラックアウト状態であることを知る。これは、少なくとも1日で復旧できるレベルではないと感じる。さらに、北海道最大の火力発電所が損傷を受け、復旧に相当な時間を要することを知る。今は大丈夫だ、でも、この停電が続けばサーバは停止を余儀なくされる。自分ができることを色々考えた、でもできることはほとんどない。さくらインターネットからの報告が気になる、、、田中社長のツイッターに動きはない。大丈夫、いま懸命に対応を検討しているはずだ。そして、9月7日未明、さくらインターネットから新たな連絡が入る。
書いてるそばから、さくらインターネットの公式から「北海道電力より、稼働に必要な電力量の50%前後の電力供給が再開されました」と報告が。うん、大丈夫、絶対に乗り切れるわこの会社なら。うちの管理してるサーバは停まらないhttps://t.co/rVHr0RTvSY
— シモキタ (@ymkx) September 6, 2018
北海道電力から稼働に必要となる50%の電力供給が再開された。50%という数字を見て、なぜか私は完全に安心した。もちろん50%では足らない、でも、とりあえず50%の供給があれば発電機の稼働時間はかなり延ばすことができるはずだ。そして、9月7日のお昼過ぎに、最も気になっていた発電機の稼働時間に関するアナウンスがあった。
【2018/9/7 12:45追記】
— まりな🌸さくらインターネット公式 (@sakura_ope) September 7, 2018
非常用発電設備は、給油ができない場合においても、月曜日の夕方頃までは稼働できる見込みです。加えて、一週間程度の稼動が可能な燃料の手配ができる見込みであり、一部につきましては、本日より給油が開始される予定です。https://t.co/jHO1Dw1o2Q
1週間程度の稼働が可能な燃料を手配できる見込み、発電所の修復に1週間、この二つの数字から最悪の事態が発生する確率は限りなく低くなったと確信した。
そして、翌9月8日お昼、北海道電力からの電力が完全に回復したとの連絡が入る。
北海道胆振東部地震による影響について(2018年9月8日14時30分追記) https://t.co/onsNyFEiIX
— シモキタ (@ymkx) September 8, 2018
※さくらインターネット石狩DCへの電力供給が回復したとのお知らせ。本当にお疲れ様でした、そして、ここからは本業で北海道の復興をバックアップしてください!!
田中社長が投稿したこの動画に、なぜか涙があふれてきた。
石狩データセンターの非常用発電設備の運転終了の瞬間です。60時間近くという、恐らくDCの歴史的最も長時間稼働した設備の一つで、最後まで支障なく動いてくれた事に感謝です。結果として備蓄燃料は70時間程度あり、節電運転する事で100時間程度が無給油で出来る状態でした。 pic.twitter.com/016aQg10Pj
— 田中邦裕 (@kunihirotanaka) September 8, 2018
データセンターには絶対に備えられている発電機。でも、その発電機がちゃんと稼働し、そしてサービスを止めることなく電力をサーバに供給し続け、そして稼働を終える、、、なかなか伝わらないと思うけど、20年間近くサーバを管理している立場からすると本当に本当に感動する瞬間だった。田中社長も元はエンジニア、全く同じような感覚で発電機が停止する瞬間を見ていたに違いない。
今回の北海道の地震はもちろんショックだし、日本という国が背負った宿命であることは理解知りつつもやはり無力感に包み込まれてしまう。ただ、さくらインターネットという会社が石狩市にデータセンターを設立し、それに伴いかなり早いタイミングでサーバを借りていた立場として、本当にさくらインターネットという会社にサーバを託してよかったと思う。とにかく、今回の地震で得られたデータは大きい。日本という国において、そう、どこで地震が起きてもおかしくないこの国でサーバを運用することにおいて、この会社にサーバを託すことが何よりも安全であると私は考えています。東京直下で同じような地震が起きるかもしれない。さくらインターネットの東京リージョンにもサーバを持っているけど、たぶんこの会社なら大丈夫だろう、そう確信しています。
石狩湾新港発電所の建設計画 – 北海道電力https://t.co/2CWiT9RQ9o
— シモキタ (@ymkx) September 7, 2018
※そういえば石狩に発電所を作るという話があったはずと思って調べたら、2019年2月運転開始予定だったのね、、、タイミングが悪いと言えば悪いけど、それが自然災害なんだよなぁ
2019年2月、石狩で新たな火力発電所が運転を開始する。もし、今回の地震の前にこの発電所が運転していたら、ブラックアウトは発生しなかったのかもしれない。北海道電力も大変な事態に直面してしまったけど、だからこそ次に活かすことができると信じている。
サーバを止めることなく今回の事態を乗り切った、さくらインターネットの石狩データセンター。私が関わるサーバには一切問題はなかったけど、一部のサーバでは障害も発生していた。でも、その経験も今後に活かされることは間違いない。たぶん、これからも私はこのデータセンターのサーバを使い続ける。今回の地震を経て、この会社にインフラを託すことが正解だと確信しているから。
そうだ、まだ石狩データセンターに行ったことがなかった。過去に何度か実施されているツアーはタイミングが合わなかったから。さくらインターネットには、今回の地震の被害がある程度落ち着いたら、ぜひ再び石狩データセンターのツアーを実施してもらいたい。データセンター業界初の危機を乗り越えたデータセンターを自分の目でしっかりと見たい、そして、北海道の復興のために実際に北海道に足を運びたい。
大きな地震に起因し電力危機を乗り越えたさくらインターネット。本業はもちろんだけど、企業として北海道の復興を支えてもらいたい。あなたたちが石狩で頑張ることが、北海道の復興に直結するはずだから。