幻の移転先


ある物件情報を目にして衝動的に内見を予約した。閉塞感に満ちあふれた2017年、このままではいけないと思った末の行動だった。

予約した2時間後に現地へ、不動産屋さんとともにその物件に立ち入る。

『!!』

衝撃だった。外観とは全くかけ離れた綺麗な内装、なんでもリノベーションをしたばかりの物件だとか。窓は北側だけにもかかわらず想像以上の採光、自然光である程度の明るさを保っている。メジャーで室内を測り、机の配置などをイメージする。大丈夫だ、これは運命的な出会いだ。物件に入り15分、もう、ほとんど自分の中では結論が出ていた。

不動産屋さんと細かいことを話していると、一つのことに気付いてしまった。この物件、ネット周りの回線環境はどうなんだろう? 電話ジャックの上にCAT5とかかれたジャックがあることに気付き質問する。当然不動産屋ではわからない話、その場で物件を管理する会社に問い合わせるが詳しい担当者がおらずはっきりしない。後ほど担当から連絡をしてもらい、結果を伝えてもらうことになった。

「まー、これ、とりあえずつけているだけのジャックだと思いますよ。回線は引けるはずです」

その何の根拠もない言葉は3時間後に完全にひっくり返される。

「回線の件ですが、○○○というインターネットが入っており、それ以外は使えないとのことです」

○○○を調べる、ああ、ビル専用のネット接続サービスだ、、、ダメだ、自分の基準に合うプロバイダはもちろん使えないぜ。

幻の移転先に出会い、恋に落ち、付き合えないことを悟った5時間半だった。2017年はあと20日経たずに終わる。